タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

もうこれ以上、事態の悪化のしようがないというか。


怖いもんなしで鼻血も出やしないよ。


お互いに言葉も交わさず、あたしたちは姫の待つ部屋へと急いだ。


豪勢な城内を、ひたすら複雑な道順で練り歩く。


・・・ここって迷路か? よく構造覚えてるわねこの人。


やっと王子が立ち止まり、繊細な植物の模様が彫り込まれている扉をノックした。


「アザレア姫、セルディオです。男爵夫人をお連れしました」


扉が内側から静かに開かれ、侍女らしい中年の、ふくよかな顔立ちの女性が顔を覗かせた。


その人の背後から、聞き覚えのある声がする。


「どうぞお入りください。セルディオ王子様」


扉が開かれて、王子が部屋の中へと入って行った。


あたしも室内に一歩踏み入れ、つい好奇心から部屋の中をアチコチ盗み見る。


大きな窓が日差しを取り込み、室内を明るく照らす。


細かい刺繍の、上等な厚手のカーテン。


王家の紋章が染められたタペストリーが壁を飾っている。


真紅の布に、金糸で刺繍された豪華な天蓋付きのベッド。


濃い上品な色合いの木のテーブルとイス。


そのイスに、アザレア姫が座ってこちらを見ていた。