タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」

「どうか一分間だけお時間を・・・!」

「余は疲れている、と言ったのだ」


王様がジロリと振り返る。


「・・・聞こえなかったのか? 男爵夫人よ」


鋭い視線に貫かれ、あたしはギクリと息をのんだ。


のぼせた頭から一瞬で血がスッと降りていく。


『自分に対して逆らい、不快にさせる者には、決して容赦しない』


冷たい目。威圧的な声。王様の無慈悲さと猛々しさが嫌というほど伝わってくる。


あたしの胸は氷のように冷え、声を失った。


何も言えないあたしを一瞥して、王様は再び歩き出す。


コツコツと足音が響く。


人生でたった一度のチャンスが、去っていく。


遠ざかるその背中を、あたしはなにもできずに黙って見送るしかない。


待って。お願いだから、行ってしまわないで・・・。


その切実な懇願も虚しく、王様は角を曲がって・・・


ついに、見えなく・・・なってしまった・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・」


あたしは呆けたまま、ズルズルとその場に座り込む。


終わってしまった。本当にこれで終わってしまったんだ。


あまりの現実味の薄さに、涙も出てきやしない。