山の中は、うっそうとしていた。


日差しを遮る大木や、腰の高さまで生い茂り、あたしの歩みを邪魔する野草。


上下左右、見渡す限りの緑一色。


おまけに、山の奥に進むにつれて、道幅がどんどん狭くなっていく。


これ、けもの道ってやつだわ。


進むうちに、いつの間にか道は消え、迷い込んだまま二度と生きては戻れない。


でも奥まで隠れないと、バカだんなの追手が来るかもしれない。


あいつネチッこい性格してるんだもの。粘ついた目やにみたいに。



ロリ変態で、おまけに粘ついた目やに、か・・・。


おまけにヒステリー持ちで、贅沢好きな、わがまま夫人。


うわ、ほんと最低。どこまでも救いようのない組み合わせ。


あんなのが屋敷の当主夫婦になったりしたら、ここいら全域、無法地帯になるわ。


大奥様が、根性を振り絞って長生きしてるのって、世のため人のためなのかも。


ごめんなさい大奥様。命根性の汚い年寄りだってずっと思ってて。



あたしは息を切らし、足早に奥へ奥へと進む。


おでこに滲む汗を、風が少しだけ冷やしてくれた。


山の日暮れは早い。どこか一晩過ごせるような場所を見つけなきゃ。