――ピーーーーン・・・。


と空気が、音をたてて冷たく一気に張りつめた。


・・・言った。確かに言った。空耳じゃない。


このお姫様、正々堂々と王様に向かってタンカ切ったよ!


ひええぇッ!? どーなるこれから!?


「・・・いま、何と申した?」


王様の低い声が余計に緊張感を盛り上げて、場の空気をさらにマズくしてくれる。


でも姫はそんな空気をものともせず、ケロッと返答した。


「わたくしは申し上げました。国で『一番価値のある宝石』を身に着ける習わしだと」


「だから、この城には無いと・・・」


「でも秘宝はこの国の所有物です。わたくし、二番目を身に着けるなんて嫌です」


「・・・・・・・・・・・・」


「それとも竜神王の目よりも貴重な宝石があるとでも仰るのですか? この国に」


王様はその言葉にむっつり黙り込んでしまった。


無いさ。そりゃ正直に言えば、無いさ。


そんなすごい秘宝なんてこの国は、ひとつも持ってないさ。


でも、でもね、アザレア姫?

あなた、一国の王の「男のプライド」みたいなのを立派に傷つけてるんですけど?


この国に大した宝石なんて無いんでしょ? ふふんっ、的な。


まさに今のは、そこをズバッと貫くヒットポイントな発言なんですけど?


・・・それ、あなた十分に自覚して、あえて引き金引いてない?


王様の導火線に、望んで火を点けようとしていない?