「・・・アザレア姫よ、なぜそれを知っているのだ?」


「陛下がマスコール王国との戦いに勝利した折り、手に入れられたと聞き及んでおります」


マスコール王国? ・・・あぁ。


聞いたことのある名前に、あたしは記憶をたどる。


えぇっと、確かうちの国と長い間、敵対関係にあったっていう大国で。


勝ったり負けたり、引き分けたり、ダ~ラダラと戦い続けて・・・


なんと百年!


互いに一歩も引かないこの戦いを制するのが、お互いの王家の悲願みたいなもの。


その悲願をついに達成したのが、この、いま目の前にいる王様!


・・・らしい。

詳しくは知らない。だってもう十数年も前の話らしいし。


「竜神王の目は、マスコール王国に代々伝わる世界的な秘宝。ぜひ身に着けとうございます」


ふうん。竜神王の目、ねぇ。

そんなすごい宝石があるんなら、姫が身に着けたいのも分かる。


一生に一度の記念日だもんね。それが女心ってもんよ。


「残念だがそれは叶わぬ、姫よ」


ゆるゆると首を左右に振りながら、王がそう言った。


「竜神王の目は、この城には無いのだ」

「・・・無い?」

「マスコール王国は呪われた地。その呪いを封印するために、余があの国で秘宝の力を用いたのだ」