記憶 ―黄昏の蝶―



買い物のついでとはいえ、勤め先にまで子供たちが顔を出す事は少ない。
最近は忙しくなかなか相手をしてやれていなかったから、ビビにせがんでここへ来たのだろうか。

そりゃあ、
俺だって早く帰ってコイツらと過ごしたいに決まっているのだが…


「――ははっ!リュウ様はどこへ行っても人気者ですなぁ!」

そう声を掛けながら俺に近付いて来るのは、協会での付き合いも長い一人の舟師。


「あぁ、お疲れ様です。いえ、そんな事はないですよ…?」

「いやいや、子供たちの残念そうな顔を見れば分かりますよ。」

ビビが子供たちの頭を撫でながら、舟師へと口を開く。


「今日は光祭り前日ですからね、リュウ様と子供たちの好物のミートパイを夕食に焼こうと思っていたんですよ?」

…何っ、ミートパイ!?

俺の涼しい顔色がピクリと動いたのを、ビビは見逃さなかった。

それは、
帰りてぇ…。

ビビの焼くミートパイは絶品。
子供たちにも人気のメニュー。

遅く帰ると、
冷めて美味しさが減る。


「…皆でワイワイと食卓を囲みたかったんですが、…やはり無理ですかね…?」

ビビは、ちらりと舟師と俺の顔を見た。
残念そうに、
でも意地悪そうに。