「もし遠距離になってお前が俺に愛想尽かしても、俺はどうやったってお前を嫌いになんてなれないし、友達にも戻れない」

「それはあたしも同じだよ! あたしが那央に愛想尽かすことなんて絶対にない」



思わず那央のブレザーを掴むと、彼は柔らかな笑みをこぼす。



「うん。だから、お互いにこの気持ちがあれば大丈夫だろ?」



ふっと、あたしの手の力が緩む。



「お互いに相手を想う愛情さえあればいいんだよ。そうすればきっと何でも乗り越えられる。
縁のばあちゃんに教えてもらったよ」



──ずっと心に潜んでいた不安が今、すーっと消えていく気がした。


かなり多忙な警察官になろうとしている那央、4年間は寮生活になるかもしれないあたし。

お互いが望む進路に進んだら、離れ離れの状態が何年続くかわからない。

でも、とっても単純でシンプルな“愛する気持ち”を持ち続ければ、あたし達はこのままでいられる。


そんなの簡単だよ。

あたしはずっと、たぶん一生、那央のことが好きだから。



「……平均寿命まで、あと60年くらいか」

「え? なに突然……」

「そのうちの数年間離れるくらい、たいしたことねーよな」



その言葉の意味を理解したとたん、胸が熱くなる。