悔しそうになげく那央に、あたしは思わず吹き出してしまった。

たしかに兄弟が多ければ会う確率も高いし、実際これまでも必ず誰かに会ってたもんね。


そんな那央の苦悩を知る由もない翔くんは、無邪気にあたし達に近付いてくる。



「今、ともくんと遊んでたー」

「そうか、俺は縁とデートだ。だから邪魔すんな」

「えーオレも縁とデートしたい!」

「何でだよ! お前はともくんと家にでも行け! スイカあるぞ、スイカ」



わーわー言い合う二人も見ていて飽きない。

翔くんも生意気だけど可愛いし。

クスクス笑っていると、何かに気付いたともくんが、遠くを指差して「あ!」と声を上げた。



「見て、虹!」



川の向こうに広がる空を見やると、いつの間にか雨はほぼ止んでいて、うっすらと七色のアーチが掛かっている。



「本当だぁ……!」

「すげーでっかーい!」



興奮してはしゃぐ翔くん達だけど、あたしも虹なんて久々に見たから結構嬉しい。

喜んで眺めていると、突然視界が傘で遮られる。

何かと思った次の瞬間──

あたしの唇に、柔らかく温かいモノが触れた。