「知らん」


「陽になついた次は、彼女になつこうってか。

そんなに魅力的には見えないけどねーどっちも」


なつくねえ…

なつくレベルかあれ。


ちょっとした千晶だぞ。


「いいじゃん友達。

青春には友達必須だぞぉ?」


「千晶のあれが青春かよ…」


俺にのみ愛を伝えて、

俺にのみ笑顔を見せて。


あれが青春って言うのかよ…


「友達ができたら、ちょっとは菅原変わるんじゃね?」


「なんで?」


「んー、嫌ほら、認知症のおばあちゃんが恋をしたら治るみたいな――」


「千晶は女子高生だぞ?」


「ハハハ、わかってる」


クスクス笑いながら、そういえば、と話を変えてきた。



「菅原、まだ英語ダメだっけ?」



「…?ん、まあ…」


「そっか。大した意味はないから」


なんでいきなりそんなこと?


先生の態度に違和感を覚えつつ、二時間目が始まる前に教室に戻ろうと立ち上がった。


「布留」


声をかけられる。

俺を見つめながら、どこか悲しそうな目で。



「私はな、お前に生きていてほしいんだ」



どこかで聞いたようなことを、また。


「……悪いとは思ってない、ただ」


話が全く見えないのに、真に迫った口調で。


「…両方傷つくなら、片方だけでも生かしたい、お前はそう思わない?」


どこか、妖艶に。