「待ってるから、また来て…?」
声のトーンが変わったのがわかるが、別に気にしない。
「千晶が来るって言ったらね」
「っ」
息を飲んだのがわかる。
…まさか、泣く?
内心ドキドキしながら、隣の美澤さんに視線を向けた。
…よかった、泣いてない…。
ホッとして、本に目線を移した。
どうやらこの人、芸能界の先輩にいじめられていたらしい。
と。
「陽!」
図書室で叫んではいけませんの法律を無視し、俺の名前を遠くから叫ぶ千晶。
悲痛な声に、驚いた。
驚いて顔をあげると、つかつかと歩み寄ってくる。
「千晶?」
近くまでくると、俺の手首をがっしと掴んだ。
あの妖艶な無表情。
「ち、あき?」
俺の言葉を無視し、俺を引きずるように歩いていく。
立ち上がってついていくことになった。
興味のない本と人をそのままにして、俺は図書室を出た。
「布留くん!」
声が聞こえた気がしたが、意識は完全に千晶に向いていた。



