急いで食べ終え、図書室へ。


ぎっしりと詰まった本は、毎回どこから集めたのか疑問にさせるほどの量を誇っている。

しん、と静かな部屋に、かりかりとペンを走らせる音。

貸し借りを受け持つカウンターから、微かに電子音が聞こえた。



「陽、ここら辺で待ってて!」


隣の千晶の言葉に驚く。


「え?一緒にいてほしいから連れて来たんじゃ…」


「ちょっと陽には内緒なの!」


パタパタと足音を響かせ、去っていく。


「……」


なんなんだ…?

千晶が珍しく変だ、いつも変か。


入り口らへんで突っ立ってると怖いから、入り口の近くの席に適当な本を持って座る。


本は超人気女優の自叙伝で、中身はいかに自分が成功したかと、自分の家の裕福さ、そして芸能界は厳しいから目指すのをおすすめしない、という体のいい若手減らしを描いたものだった。


これ、借りる価値があんのか?


疑問に思いつつ、ページをめくろうと紙を擦る。


と。



「布留くん?」



明らかに千晶じゃない声がした。


千晶以外の人間に答える義務はないから、無視しようと決めた。


「……」


「ねえ、布ー留くん?」


「……」


「布ー留くーん」