◇◇◇


ちら、と美澤さんの席を見る。


まだ帰ってきていない。



移動教室の美術室に来ないということは、たぶんサボりになる。



…な、泣いてたなあ。



もしかしたら俺のせい?





「今日はめんどくさいから美術鑑賞ねー

んー…これでいっか」



教室とあまり変わらない配置の美術室で、ふざけたことを行ってる先生。



「知ってる?

『手紙を読む少女』」



一枚の絵を黒板に貼って、題名を書いていく。



千晶は授業受けれてるのかな。



「これは不倫の絵だ」



ふ、不倫?


なんちゅーこと教えてんだ、先生!?



不倫、ねえ…



俺らの客には、既婚者の人もいた。


当然、バレて抗議に来る人もいて――


『お宅の旦那様はそれは素晴らしい方ですね。

毎週毎週孤児の彼らと遊びに、此方へいらしてるんですよ。

売春?なんのことでしょう』


バレた時の対処法はこれ。

孤児

大抵の人はこの言葉で哀れになる。



孤児が哀れ?

ふざけんな。


幸せな孤児もいるんだ。


ただ俺らはちょっと特殊で、孤児という『商品』だった。



ただ、それだけ