「なんか?」


さっと後ろをむくそいつ。


「そ。

なんか…」


正直、いままでムカついてた。

このあばずれ女に。


でもなんだろ。



その横顔。



伏し目がちな目、悲しそうに歪んだ口元。


失恋した女の顔だ。




「…好き、なの?」




本当に?

本当にあの布留が?



「…うん」


布留、モテ期到来。



そしてちょっと思ってしまった。



もし、布留がこいつを好きになってくれたら。




布留は死なずに済むかもしれない――




私の汚い身勝手な感情。

でも布留は助けたい。



「…応援してやろうか」



「えー?嘘は嫌いだよ?」



「本当に」




布留を助けたい、そう思った。



アイツには何がなんでも生き延びて欲しいから。




「山本朱祢、協力してやっから」




ふうん、と値踏みするように上から下まで見られた。



「美澤華恵。

『みい』って呼んで?

その呼称はバカ専用なの」



なんだか一々しゃくにさわるやつだ。