「さて千晶。ご飯何がいい?」


朝ごはんを作るのは俺の役目。

食堂に食べにいくのもいいのだが、千晶が手料理がいいと利かないから。


「ご飯かぁ、陽食べたい」


ぴくんと体が反応する。

それはロマンチックでもなんでもない。

ただの呪詛。


「ご自由に」


馴れてるから、普通に答える。

何かしたかな、俺。

あぁ…最近テスト勉強に勤しんでたから、すねたのか。


「いいの?」

「どーぞ」


その言葉を合図に、重みが消える。

千晶が立ったのた。


しばらく待ってれば戻ってくるから、いつものように寝転がったまま待つ。


それは忠犬でもなく、愛でもなく。


「お待たせ」


戻ってきた千晶は、寝室兼リビングに入ってはいけないものを手にしていた。


「陽大好き」


顔からは笑顔が消えている。


まあ俺は、いつもの通り。



「本当に本当に大好き」



一歩、また一歩と近づいてくる。



ネズミを追い詰める蛇みたいに。



どんどん追い詰められるけど、逃げるそぶりも見せずにただただ待つ。



早く

早く来い。




「好きすぎて辛いよ」





妖しくなるその顔。


俺はその顔が一番好き。



人間らしさが消えるから。