愛すと殺すと


「私が綺麗って、ほめてんのかそりゃー」


けらけらと楽しそうに照れる。
いや、そうじゃなくて。


「…しかし、あれだなー…
何かあったろ、お前」


「手当て、ありがとう…」


逃げよう。

こいつに手を出した私がダメだった。


余計な詮索をする人は嫌い。


だって、気持ち悪いんだ。

汚いのを持っているのに、人様に平気で踏み込むなんて。

気持ち悪い。


トイレから逃げようとした私の手を、当然のように掴んで。


「…誰も何があった?とは聞いてねーよ。
てめーみたいなのが特に話したがらないのは、こっちもわかってる」

「っ、」

あ、やっぱり。
何かが綺麗だ、彼女は。

「勘違いすんなよ。こっちも聞きたいのは山々だ。

目の前で私の好きな子が泣いて苦しんで逃げ回ってるんだからな。
聞いて、なんとか救いたい。痛みを分かち合ってやりたい。痛みを感じる体を私も持ってるんだから」

触られた手に悪寒が走らない。

むしろ、腕に絡んだ暖かい指先が、もっとほしい。