「ねえ千晶、笑ってよ」
ほっぺをつねってみる。
いやいや、というように逃げてしまった。
でもめげない。
「千晶、俺は千晶が好きだよ」
愛の告白。
なんてね。
千晶は好き。
千晶は大事。
鳳紀が大事にしてたぶん、俺が守らなきゃならない。
これが恋愛感情かはわからない。
ただの兄弟愛かもしれない。
だけど、守らなきゃならないことに変わりはない。
「あんなやつら、知らねえからさ」
表情が読み取れない。
「気にしないで、千晶」
頭を撫で撫で。
「……俺が愛してないって思うのなら、殺せばいいさ」
ピクッと体が反応する。
「そしたら俺はどこにも行けなくなるよ?」
「…殺していいって、愛してるってことじゃん…」
ふてくされたように言う。
「死なない?いかない?」
「死なないし行かない」
「本当?」
「あぁ」
肩を抱き寄せる。
今度は逃げなかった。
「お兄ちゃんの所、行かないで」
「行かない」
たぶん俺は、地獄だから。
でも機嫌は治ったようだ、よかった。