愛すと殺すと


無事に切り終わり、礼を言おうと立ち上がる。
軽く近くの男のコートで体を隠し、正面を向いた。

そして気づく。

なんだこいつ、かっこいいじゃないか。

闇に溶けそうなちょっとロングの黒髪に、男にしたら華奢な体つき。
野獣のような目だけど、やけに爽やかな。
しかし服装はロックテイストで、今から一曲唄いますと言ったような。


「ありがとう、ございます」

「んー」


軽い返事に戸惑いながら、頬についた血を発見。

このひと、怪我してない…
たぶん血は返り血だろう。


「あの、血が」

拭おうとして手を伸ばす、と。


パシッとはね除けられる。


「…えっ」

「あ」

ほぼ無意識だったらしく、アハアハと笑った。

「悪ぃ悪ぃ、俺臭いつけられんの嫌いでよぉ…て、ありゃ?俺血だらけじゃね?」

くるくると己の体を確認。

「…やべぇな…、ハニーに殺される…」

呆然と呟いた瞬間だった。


「ハニーがなんだってー?」


闇に相応しい、冷えた声。