「助けて」
私としては助けてほしかったから。
「それはお願い?」
「へ?あぁ…うん」
不思議なことを口走ったから、肯定すれば。
瞬間移動。
そう思うぐらいの早さで、こちらに間合いを詰めていた。
どこかゆっくりと上品に腕を持ち上げると、ナイフを持っていた男の手を掴む。
「うぐぁあああああっ!」
不自然な方向に一気に曲げ、嫌な悲鳴がこだまする。
ガキッとかボキッとか、なんかそんな音。
くるりと体を反転させ、殴りかかってきたやつの顔面を長い足で蹴った。
ぐにゃりと顔が変わり、血が舞う。
うわっ…と思っていたら、私の近くにいたやつが飛んでいた。
異常だった。
血飛沫、悲鳴、うなり声に殴る蹴る音、空気を切る気配。
全てが彼によって起こっていて、彼が動けば世界は変わる。
そのくらい強かった。
10分くらいに感じたが、たぶん2分くらいだったのだろう。
気がつけば、回りは死屍累々と化していた。
「お、しゅーりょー」
やけに軽く彼はいい、私を見やる。
「はい」
ヒュンッとナイフが投げられる。
ビックリしたが、殺意はない。
これでロープを切れということか。



