自分のことはわからなかった。
なら、
菅原のことだけわかってたのはなぜだ。
それは、言い方を変えれば簡単だ。
菅原しか見てなかったから、なら?
自分のことが目に入らぬほど、菅原だけを視界にいれていたのなら?
よくよく考えればわかること。
なのに考えなかった、否、考えたくなかったのは
「(…布留を殺したくなかったからか)」
あのまま私が作ったあの部屋にいれば、彼は確実に死ぬだろう。
いや、菅原であれ、好きな人ができたを認識すれば死ぬのかもしれない。
それがいやで、布留に繋がる“好き”を考えなかったのだ。
つくづく己が嫌になる。
お節介とは、ただの己の甘えだ。
布留を死なせたくないから、なんてさ、布留が死ぬのが嫌だっただけじゃんか。
あーあ、私ったら最低すぎる。
他人を自己満足に巻き込んで、さ。
「…布留」
出た声は、震えていて。
うわ、恥ずかしなんて思ってしまった。