場所は千晶の新しい家で、普通の一般家庭の、とても優しい印象の家だった。


菅原さんたちは千晶を理解しようと必死だった。


暖かい家のなかで一人だけ異様な冷たさを持つ千晶を。



「千晶」



付せた目に声をかけると、ピクリと反応する。


「俺だよ、陽だよ」


ハッと目が上がる。

とたん、黒色の瞳に色が宿り、温度が湧き出てきて――


「陽!陽ぉ!」


座っていた椅子を蹴飛ばして、抱き締めにきた。


まるで、たったいま会ったように。
俺が来たことにすら気づかなかったように。


「千晶ね、あのね、大好きな陽がいなくて、すっごくすっごく――」

「はいはい。落ち着け、な?」


子供のように騒ぐ千晶に、あっけにとられる周り。


「千晶ちゃんが…」

「へぇー?そーなるのか」


興味深そうな先生は、お茶をすすりながら。


「陽ぉ」


ニヤリと笑いながら。


「いいこと考えてたんだけど、私」