◇◇山本先生の保険日誌◇◇


一時間目終了の合図とともに、コイツは立ち上がって去っていった。


「…じゃ」

「ええーもぉ行っちゃうのー?」

「先生は本当に俺が好きだなぁ」

「いやん不倫発言…!そんな、いけないわ、あなたには彼女がいるのに…でも燃えちゃうぅう♪的な?」

私はコイツ、布留陽杞が好きだ。

恋愛感情じゃなくて、親心とゆーか友達とゆーか。


私の言葉を無視して、パタンと虚しく扉が閉まる。


うーん、不倫相手にホテルで置いていかれた気分。

ちら、と手元のスマホを見た。

メールをささっと打つ。


『今布留陽杞来てたー!
だいぶ喋るようにはなったよ。

まだあの話は無理らしい』


すぐ返信。
どれだけ暇なんだ。

『マジで?
女の子の方はどう?』

『菅原千晶は全く来てない。
学校は来てるけど、それは布留がいるからだし
布留を見張るためだけに来てる。

相変わらず殺しかけてる(笑)』


『まだヤンデレなの千晶ちゃん?

愛されてんなー布留くん』


『両親とはうまくいってるらしーよ』


それ以来返信が途絶えた。

不定期で仕事でも入ったのか。

コイツ、石橋亮は刑事だ。


私の遠い同級生で、あいつらの事件を受け持った張本人。

5年経った今でも、石橋は気になるらしい。