ガチャ

「お帰りなさいませ 慧里奈様!」
「只今戻りました。広菜さん。お兄様はいますか?」
「いいえ。慧里奈様を探しに!」
「そうですか…。」
「今お電話いたしますので!」
「だめ!」
「え?」
「お兄様には連絡しないで。お父様と大事なお話があるので…」
「わかりました。お兄様はお邪魔…という事で!」
「そういうわけじゃ…」
「でもあの事ですよね?」
「はい。」
「ならお邪魔ですね!朋樹に言っておきます!時間稼ぎをするように…と!」
「…」
「では失礼します!」
「…。」

話が早い人だ。

じゃあ私は、

「お父様に会いに行かなきゃ。」






コンコン

「誰だ。」
「慧里奈です。」
「入れ。」
「失礼します。」
「どうした?もう限界が来たのか?」

そう言いながらも、目先は資料に向いていて…。

「いえ。ですが、その事でお話が…。」
「何だ?」
「私は…」

ギュッ
手に力が入る。

「?」

言わなきゃ。
晃君と約束したんだから…。

「私、神崎慧里奈は長期の間 隣のK県に滞在したいと考えています。」
「いきなり何を言い出すんだ!」
「無理を承知で申しているのです!」
「だがお前には神崎の名を継いでもらわなきゃいかんのだ!その重大さはお前が一番分かっているだろ!」
「分かっています!ですが、私はまだ高校生です!勉強やマナー、今の社会に対する思いや恋愛…これらの事は私にはまだまだなのです!それを勉強しに愛する人と暮らし、学びたいのです!」
「愛する人だと!?それは誰だ!」
「…」
「誰なんだ!!」

言ったら、反対されるかもしれない。
でも…私は

「高垣晃です!」
「高垣だと!?あいつか…」
「知っているのですか!?」
「あぁ。知っている。智彦から聞いている。」
「お兄様から…。」
「凄くかっこいい男だと聞いている。」
「へっ!?」
「頭が良く慧里奈のためなら何でもするような奴だそうだな。」
「まさか…お兄様が?」
「あぁ。」
「じゃあ、なんで晃君を…?」
「からかっただけらしい。」
「本当にそうなんでしょうか…?」

なにか裏があるような気がする…。
しかも…

「矛盾してます。」
「何がだ?」
「からかっているだけと知っていたなら、私をわざわざ一人暮らしさせる意味が無いからです。」










何か…






秘密があるんだ…

きっとお父様とお兄様、晃君に…。