「慧里奈。待てよ。」

タ タ タ タ

立ち止まらずに歩く。

「俺は、お前を信じない。」

ズキッ
胸が痛い。

「…」
「だけど…」

早く言ってほしい。
なんなら、“嫌い”って言ってくれるとありがたい。


「慧里奈の心の中は信じる。」
「…」

こんな私でも、まだ信じてくれるんだ…
今すぐ抱きつきたい。


だけど…

「もう遅い。」
「え?」
「さようなら。」
「慧里奈!」

ごめんなさい。
信じてくれたのに…

目の前がぼやけて見えなくなる。

「お兄ちゃん。」
「はーい。」
「早く行こう。」
「うんっ!ってか、慧里奈泣いてんの?」
「…目に ゴミが入っただけだよ。」

そういう事にしておこう。
すぐにバレたと思うけど…

「ふぅ~ん。そうなんだ。じゃあもう良いのね?」
「何が?」
「友達さん。」
「…あれはもう友達じゃない。」
「そうなんだ。さっ!早く車に乗って!」
「はい。」

友達ってなんだろう…?

ふとそう思った。







連れてこられたのは、豪邸なんだけど…

「なんで本家?」
「ここが俺らの本拠地。」
「俺ら?」
「俺ら。仲間いるし。」
「仲間?」
「うん。そいつに、慧里奈の転校の手続きしてもらったの。」
「そうなんだ…。」





「ただいま~。」
「…」

家に入る。


メイド「まぁ!慧里奈様!お帰りなさいませ!智彦様(トモヒコ)も!」
シツジ「智彦様。お帰りなさいませ。」


「ついでみたいに言うな。ただいま。朋樹さん。」
「ただいま。広菜さん」

私の…
神崎の家に勤めている、メイドさん。

このメイドさんは私の教育係の人で名前は深田広菜(フカダヒロナ)さん。

ついでに、お兄ちゃんの執事さんは広菜さんの旦那さんの深田朋樹(トモキ)さん。

夫婦で私達の面倒を見てくれている。


あっ!そう言えば…

「広菜さん!」
「何でしょうか?」
「私のマンション片付けてくれてありがとうございます!」
「分かっていたのですか!?」
「はい!帰ると少しだけ家具が移動していたので!鍵はお父様から?」
「そうなんですか!?大変申し訳ありません!はい!鍵は旦那様から頂きました!」
「とても助かりました!ありがとう!」
「いいえ。喜んでいただけて何よりです!」

私はにっこり笑って、自分の部屋に向かう。