苦しい。

燃えさかる炎の中私は1人。

『誰か!助けて!アツいよぉ!』

そっか。
そうだよ。
私なんかを助ける人なんていないよ。

みんなを傷つけたんだから。

『ごめんなさい。みんな。あぁするしかなかったの。本当にごめんなさい!』

ガバッ

「ハァハァハァハァ。」

夢…か…。

「おはようさん。怖い夢でも見てたんだね?」
「…」
「言葉に出来ないほど怖かったの?可哀想に。よしよし。」

そういって、私を撫でる。

「触らないで。お兄ちゃん。」
「まぁ。そんなに怒るな。俺のことが嫌いなのはわかってるけど、そこまで嫌うなよ~。頑張って探したのに。俺泣いちゃう。」

泣き真似をするお兄ちゃん。

「どうやって私を探したの?」
「そりゃがんばったよ~。お父様が必死に慧里奈の事隠してたみたいだけど!」
「…。」

そう。
お兄ちゃんが私にしていた事、私がお兄ちゃんにしたことをお父様に言ったら、すぐにマンションを用意してくれた。

もちろん、お兄ちゃんには内緒で。



思い出したくない。あの時の記憶。

「慧里奈。忘れるなよ。お前は神崎の名を汚しそうになった女なんだからな。」
「はい。」

消せない過去。
決してやってはいけない。

「お前は、俺から離れられないんだからな。」
「…はい。」
「わかってるなら行こう。」
「ここの家はどうするの?」
「知らねー。そのままにしとけばいい。」
「わかった。」

逆に良かった。

みんなで遊んだこの空間を汚したくなかったから。


「私…」
「何?慧里奈。」
「明日から学校はどうすればいいの?」
「あぁ。転校。家の近くの高校。」
「えっ…」
「嫌か?」
「ううん。」

うん。なんて言ったらどうなることやら。

「そっか。じゃあもう転校の手続き終わったから、行こう。」
「はやいね。」
「あぁ。ダチにやってもらった。」
「そうなんだ。」

話はそれっきり。









「ほら。行くぞ。」
「はい。」

起きてから、どうやって着替えたのか。
支度はいつ出来たのか。

全然 わからない。
ボーッとしてたみたい。


いつの間にか玄関の前。

お兄ちゃんは先に行ってしまって、私1人。

「やだよぉ。」

水の玉が一粒一粒頬をつたう。

「行きたくない。晃に会いたいよぉ。」