【礼奈side】

「礼奈の彼氏、超カッコいいね。手を繋いだりして、見ててドキドキしちゃった」

 女子更衣室で百合野はテンション上がりまくり、意味不明に私の背中をバンバン叩く。私は大太鼓じゃないんだってば。

「痛いよ」

 制服のブラウスを脱ぐと、百合野はすかさず私の胸に目を向けた。

「礼奈って、童顔だし身長は低いし痩せてるのにグラマーだよね。礼奈の彼氏もそのミスマッチなナイスバディに夢中なのかな」

「やだな。百合野、変なこと言わないで。私と創ちゃんはそんなんじゃないから」

「またまた、嘘吐かなくていいよ。二年以上も付き合って、そんなんじゃないってどんなんだよ」

「だって本当に……私達はまだそんなんじゃないから」

「まじで?彼氏は大学生だよね? ずっと我慢させてるの?」

「我慢って……。お兄ちゃんと彼は親友だし、お兄ちゃんが煩いから」

「やだ、礼奈のお兄ちゃんシスコンなの? 質が悪いな」

「確かに、お兄ちゃんは質が悪い」

「何もしなくても、ラブラブなんだね。バカップルだね」

「バカップルじゃないよ。創ちゃんは優しい人だから」

「ていうか、昨日、駅で遭遇したあと、山梨先輩ガックリしちゃって。見ていて可哀想だったよ。礼奈のこと本気だったみたい。礼奈も罪だね。あのラブレターは山梨先輩だったんじゃない?」

「まさか……」

「ヤバッ、時間時間、早くグラウンドに行かないと鈴木先輩に怒鳴られちゃう。先に行くね」

「ま、待ってよ、百合野」

 私は慌ててジャージに着替えた。

 グラウンドに行くと、すでに鈴木先輩は来ていてコートのライン引きをしていた。部員はランニングとストレッチを終え、シュートの練習をしている。

 いつもなら百発百中と言えるくらい、的確なシュートを放つ山梨先輩が、今日は何故か決まらない。

「山梨先輩、どうしたのかな……」

 驚いている私に、鈴木先輩が呆れたように言葉を発した。