決めた!
 絶対に、創ちゃんにキスしてもらう。

 私のファーストキスの相手は創ちゃんしかいないんだよ。私のキスで創ちゃんを女子に目覚めさせるんだ。

 だから今日も『デートは何処に行く?』って聞かれて、迷わず『創ちゃんち』って答えた。

 創ちゃんが一瞬困った顔をしたんだ。眉間に皺を寄せちゃって。創ちゃんちに行くことが、そんなにマズいのかな?

 普通は『チャンス』って思うはずでしょう? 創ちゃんって、やっぱり変だよ。

 私は今日創ちゃんの部屋に初めて行った。部屋の中は綺麗に片付いていて、淡いブルーのカーテンに、ベッドカバーもブルーだった。

 青空みたいで、お日様みたいな創ちゃんの匂いがする部屋。

 でも創ちゃんは何もしてこない。
 だから、私から勇気を出して抱き着いた。

 私が顔を近付けても、創ちゃんは顔をそむけるんだ。

 思い切って、『キスってどんな味?』って聞いたのに、創ちゃんは慌てて私の手を振りほどいた。

 ……うそ。

 ……大ショック。

 私って、そんなに魅力ないんだね。

『映画を観に行こう』って、手を出されて創ちゃんの手をそっと握った。

 大きくて温かい手。
 この手でギュッと抱きしめられたら、どんな感じなのかな?

 創ちゃんは私を抱きしめてくれないの?

 お兄ちゃんとはゲームしながら、あんなにじゃれ合って、抱き合ったりしてるのに。

 やっぱり、二人は怪しい関係なのかな。

 私は創ちゃんの自転車の後に乗った。交際して、初めて乗せてもらったんだ。

 創ちゃんに抱きつくチャンスだから、背後からギューッて力いっぱい抱き着いた。

 気持ちいいね。創ちゃんの広い背中。
 幸せな気分。

 私達は自転車で最寄り駅まで行き、山手線で渋谷に行ったんだ。

 二人で手を繋いで渋谷の駅を歩いた。

 指を交互に絡ませて、初めて恋人繋ぎをした。鼓動が兎みたいに跳びはね、ドキドキしたよ。

 歩道橋を上ると、創ちゃんは繋いだ手を解いて、私の真後ろを歩いた。

 ――何でだろう?