「創ちゃん、創ちゃん、創ちゃん」

「はいはい、そんなに連呼しなくても聞こえてますってば」

 俺はバナナの叩き売りじゃない。

「見て、見て、見て」

「だからぁ、見えてますってば」

 礼奈は真新しい高校の制服に身を包み、俺の目の前で一回転して見せた。

 空色のブラウスに赤いリボン。ブレザーは白で衿や袖口に紺色のラインが入っている。紺地に赤や黄色のタータンチェックのプリーツスカート。制服のブラウスや胸元のリボンは数種類のカラーが選べて、スカートも数種類のデザインがある。制服の組み合わせは自由だ。

 礼奈がくるりと回転すると、膝上のスカートがふわりと広がり、チラッと……みえた。

「うわっ、エッチ。創ちゃん、今見たでしょう?」

 ていうか、見せたのは礼奈だよ。

「み、見てないよ。全然、見てません」

 はい、見ました。
 今日はピンクです。

「高校の制服姿を一番最初に創ちゃんに見て欲しくて着てみたの。どうかな、制服すっごく可愛いでしょう?」

 新調されたばかりの制服を身に纏い、何度もくるくる回って見せる礼奈。桜の花びらが風に舞うように、チラチラとピンク色の下着が見えてますけど。

 これは計画的犯行でしょうか。

「スカートが短すぎるよ。スカート丈は膝が隠れた方がいい」

「膝が隠れる長さ? そんなのダサくてやだ」

「ダサくていいよ。可愛くなくていい。うんと、ダサくしろ」

 『あっかんべー』って、舌を出しながら礼奈はさらにスカート丈を短くした。

 俺を挑発してるのか?
 そんなに短くしたら襲うぞ。

「明日、入学式だよな」

「うん、そうだよ。中学の友達と同じクラスになれたらいいな」

「友達って女子?」

「当たり前でしょう。他に誰がいるの?」

「桐生とかさ」

「桐生君? そっか、桐生君もいたね」

 白々しいな。
 わざとらしい演技だ。

「中学の先輩もいっぱいいるんだよ」

「中学の先輩? まさか、元生徒会長とか?」

「うん……。そうだった、元生徒会長もいたね」

 ぐっ……。
 さらにわざとらしい。

「もしかして、礼奈に告った男子?」

「うん……。そうだったかな」

 俺は礼奈が引き上げたスカート丈を、ズリズリと下げ膝を隠す。

 そんなこと俺は聞いてないよ。礼奈に告った男子が、どんだけフローラ大学附属高校に蔓延ってるんだよ。