――翌日の正午、礼奈からLINEが入る。

 俺は大学の食堂で友達と一緒にランチをしていた。

「なに、創、彼女からLINEか?」

「まぁな」

 LINEには面接試験が無事に終わった報告とでっかいハートマーク。

 どうやら、礼奈は自信があるようだ。
 だが、昨日の練習では不合格間違いなし。

【礼奈、まだ受験は終わっていない。公立高校の受験に向けて、スパルタ授業するからな。】

【スパルタ? 受験勉強はもう必要ないよ。絶対に合格するから。面接試験で制服のことをすっごく褒めたら、面接官が笑ってた。これって好印象でしょう?】

 それは、違う意味で笑ったんだと思うけど。
 本人がそう思っているなら、それでいい。

【それに、昨日パパとも面接試験の練習したんだよ。パパにいっぱいダメ出しされたけど、効果抜群だった。】

 何だよ、何だよ。
 父親とも練習したのか。
 俺の苦労が水の泡だ。

【英語での面接試験もあったけど、バッチリだったしね。】

 マジか、マジか。
 何気に、礼奈は英会話得意なんだよな。

【大学の講義が終わったら来てね。】

 インフルエンザの高熱も下がり、お姫様は上機嫌だ。

 ◇◇

 俺は大学の講義を終え、真っ直ぐ礼奈の家に向かった。

 チャイムを鳴らすと直ぐさま玄関ドアが開き、礼奈が家から飛び出し俺に抱き着いた。

 もしかして、玄関で俺を待っていたのかな?

 まるでご主人様の帰りを待ちわびた仔犬みたいだ。

「お帰りなさい! 創ちゃん」

 いや、ここは礼奈の家。挨拶するなら、『いらっしゃい』だろう。

  まっ、いっか。

「ただいま。礼奈インフルエンザはもういいの?」

「うん、昨日創ちゃんに額にチューして貰ったから治った」

 俺のキスは解熱作用のある頓服か?ていうか、若干咽が痛むし俺がヤバい。

「創ちゃん、受験も終わったし、今日はゆっくりしようね」

「まだ受験は終わってないよ。公立高校があるだろう。気を抜いたら、公立高校にも受からないよ」

「……公立高校にもって、フローラ大学附属高校に落ちたみたいな言い方しないで。合格間違いなしなんだからね」