「へぃへぃ、わかってますってば」

　何もしなきゃいいんだろう？

　でもさぁ、俺も一応『男』なんだよ。

　まだ幼さが残っている中学生とはいえ、礼奈は『女』だ。

　健全男子に『手を出すな』って、それって不可能だよ。

　でも、あの敏樹のことだ。
　俺が約束を破れば、ボコボコにされボロ雑巾のように捨てられるに決まっている。

　そもそも大人になるまでとは、何歳までなんだ？　選挙権は十八歳から、即ち十八歳から解禁なんだよな？

　礼奈はまだ十三歳なんだよ。
　あと五年もおあづけかよ。

　礼奈が大人になる前に、俺が干物みたいに干からびちまう。

　◇

　あれから一年間。
　俺は我慢に我慢を重ね、耐えに耐え抜いた。

　この春、やっと礼奈は中学ニ年生になった。

　今時の中ニといえば、男女交際もしてるしキスくらい経験済みだよ。

　それなのに敏樹は、『礼奈に手を出したらフルボッコにする』と俺を脅す。

　敏樹は頭脳は弱いが、喧嘩にはめっぽう強いから質が悪い。

　自分は女子大生の年上彼女と仲良くやってるくせに、俺一人が我慢大会だよ。

　あと四年も我慢するなんて、断食している修行僧よりも過酷な修行だ。

　俺は自宅デートで礼奈の誘惑をうまく交わし、家を出て自転車の後に礼奈を乗せた。

　ただそれだけのことなのに、礼奈は「ウフフ」って、嬉しそうに笑った。

　まじでカワイイ。
　ああ、あの可愛い唇にチュチュッて、キスしたい。

　サドルに尻を乗せると、背後から礼奈が俺にムギュッて抱きついた。

　礼奈の体が密着し、豊かな胸がまた背中に当たってるよ。

　これはわざとか……？
　そんなにムギューッて、しがみつかなくてもさ。俺は押し寿司じゃないんだから。

　何度もこんなことをされたら、俺の心臓が爆発しちゃうだろ。

　俺の頭ん中、白いマシュマロで埋め尽くされてんじゃん。