【礼奈side】

 創ちゃんが私の家庭教師を引き受けてくれた。思わずジャンプするくらい嬉しかった。

 これでお兄ちゃんの小言を気にせず、私の部屋で二人きりになれる。

 それなのにお兄ちゃんは相変わらず私達を監視し、邪魔ばかりする。創ちゃんは家庭教師になった途端冷たいし。『彼氏は封印』って、何かの罰ゲームですか?

 家庭教師は二人きりになる口実に決まってるのに、本当に家庭教師になるつもりなの?

 カレカノの私達。
 どうせ勉強するなら、もっと甘い雰囲気で教えて欲しいな。そしたら頑張れるのに。

 大学生になった創ちゃん、まだ中学生の私。
 創ちゃんが大人に見え、私達の間に高い壁が聳え立つ。

 創ちゃん、私で本当に満足してるのかな?
 創ちゃんと私はファーストキスもまだなのに。

 もうすぐ付き合って二年。
 でも未だに、額や頬にチュッてキスするだけ。

 創ちゃん、欲求不満にならないのかな?

『二時間勉強したご褒美』

 創ちゃんはいつものように、額にチュッてキスを落とした。

 背筋をピンと伸ばすと、額じゃなくて唇に触れたりして。

 そうだ、その手がある。

 創ちゃんが頬にキスをするタイミングで、私が顔を左に向けたら、唇に触れちゃうよね。

「創ちゃん、おかわり」

「……っ、ご褒美におかわりはない」

「次はホッペでお願いします」

 創ちゃんはニコッと笑い、「これで終わりだよ」って、唇を近付けた。

 今だ!

 思いっきり首を左に向けたら、フライングしてしまった。

「礼奈」

 あーあ……。
 作戦は大失敗だ。

「今日の勉強は終わりだよ」

 そんなの酷いよ。
 まだホッペのキスは終わってないのに。

「もうちょっと勉強したい。お願い、先生」