まどかと交際している間、幸せを感じるよりも不安なことの方が大きかった。

 まどかのことを独占したくてキス以上のことを求めてしまい、まどかに拒まれ俺もまどかもギクシャクした。

 俺が熱くなればなるほど、まどかの心は冷えていき俺から離れていった。

 あの頃の俺はまどかが離れていく焦りと、自分自身への苛立ちで、いつもピリピリしていた。

 でも今の俺は違うんだよ。

 礼奈とは、心で繋がっていられると信じてるから。

 だから前みたいに焦りや苛立ちなんて感じない。礼奈といると心が洗われ穏やかになれる。

「創、変わったね」

「そうかな? 礼奈が俺を変えてくれたんだよ」

「……そう。いい子に巡り会えたんだね。私ね、実は今からデートなの。今付き合ってる彼氏は時間に煩くて、五分でも遅刻したら大変なのよ」

 まどかが「ふふっ」て、意味深に口元を緩めた。

「そんな男と付き合ってるのか? 大変だな」

「だよね。でもあの頃の創とちょっと似てるんだ。ヤキモチ妬きで、どうしようもないんだから。自転車の二人乗りなんて目撃されたら、拗ねちゃうかも」

「……なんだよ、それ」

「ふふっ、やっぱり創みたいな人を好きになっちゃうの。仕方ないね。創、可愛い彼女とお幸せに」

「ありがとう。まどかも元気でな」

 まどかはニコッと笑い俺に手を振ると、小走りに駅の中に入って行った。

 俺は自転車に跨がったまま、暫くまどかの後ろ姿を見つめていた。

 まどかに本当のことを話して、吹っ切れた気がした。

 心のどこかに燻っていたモヤモヤしたものが、浄化された気がした。

 ――礼奈……。

 やっぱり俺は、礼奈のことが一番好きだよ。

 だけど……。
 俺の気持ちは、礼奈にちゃんと伝わってるのかな?

 心で繋がるって、すげえ難しいよ。