だって俺は、さっき断言したんだ。

 礼奈が大人になるまで手は出さないって。

 ――中学卒業まで、あと一年半もあるんだよ。
 考えただけで、気が遠くなるくらい長い……。

「ほらぁ、創ちゃん、早く帰ろう」

 急にご機嫌になった礼奈が、俺の手を掴みグイグイ引っ張る。

「はぃはぃ……」

 リードを引っ張られた犬みたいに、俺は礼奈に手を引っ張られて歩く。

 この小悪魔なお姫様に、俺は勝てるかな?
 もうすでに負けてる気がする。

 渋谷の雑踏の中で、礼奈と繋いだ手が夏の太陽よりも熱く感じて。

 その指先には礼奈の唇のぬくもりが残像のように残っていて。

 恥ずかしそうに笑いながらも、ギュッて手を握る礼奈が、映画館に入る前よりも大好きで。

 キスができなくても、俺は十分『シアワセだな』って思った。

「礼奈、本当に俺んちにまた来る気?」

「うん」

「CD聴いたり、DVD観たりするだけだからな」

「わかってるよ。創ちゃん、それ以外に何するの?」

「……っ、それしかしないよ」

「もしかしてエッチなこと考えてたの?」

「ば、ばか、エッチなことって、エッチなことって、考えるはずないだろう」

 キスもまだなのに。『そんなことこれっぽっちも考えてない』と、断言できない俺。

 男の脳ミソは、エッチな妄想でできてるに決まってるだろう。

 ああ……。
 生き地獄だ。

 俺の我慢大会は、いつまで続くのかな。

 俺の可愛いお姫様。
 どうか、お手和らかに。