【礼奈side】

 夏休みも創ちゃんはバイトばかり。
 創ちゃんとなかなか会えないから、会う口実を作るために、家庭教師をしてもらうことにした。

 私の作戦は大成功。
 家庭教師のあとは楽しいデートが待っている。

 創ちゃんと二人きりの夜を過ごして、私と創ちゃんの関係がちょっとだけ変化した。

 大好きな気持ちは以前にも増してどんどん膨らみ、創ちゃんのことを独り占めしたくなった。

 バイトばかりに熱中する創ちゃん。
 私の恋敵はレンタルビデオ店だ。

 寂しいな。
 創ちゃん。

 もっと傍にいて欲しいよ。
 創ちゃん。

 不安な気持ちが弾けるくらい……。
 強く抱き締めて。

 男子は好き嫌いに関係なく、女子と浮気できる生き物だとお兄ちゃんから聞いた。お兄ちゃんは私の不安を煽り、意地悪な笑みを浮かべる。

 創ちゃんがバイトしてお金を貯めているのは、他の女子と浮気をしているから?

 もしかしたら、誰かに貢いでいるのかな?

 不安になった私は、私立探偵みたいにこっそり創ちゃんの後をつけ、バイト先のビデオ店に潜入捜査だ。

 ビデオの棚に隠れて、創ちゃんの動向をじっと見張る。

 どうやらこの時間帯は男性スタッフばかりで、女性は一人もいないようだ。

 創ちゃんは黙々と仕事をしている。

 笑顔で接客する姿は、アイドルや俳優よりもかっこよすぎて惚れ惚れする。

 片想いしていた時も、両想いになった今も、ずっと創ちゃんにドキドキしているんだよ。

 こんなにドキドキしていたら、私の心臓が風船みたいに破裂しちゃう。

「……礼奈? なにしてるの?」

「てへっ。か、隠れんぼ」

 「隠れんぼ?」

 もう見つかちゃった。
 どこにいても、どこに隠れていても、創ちゃんは必ず私を見つけてくれる。

 創ちゃんは、世界一かっこいい私の王子様だ。