ギュッと手を握ると、礼奈もギュッと握り返した。

「創ちゃんは白馬に乗った王子様だね」

「へっ?」

「礼奈に何かあると、すぐに駆けつけてくれる。桐生君の時も、今日も」

「そうだよ。俺はいつだって直ぐに駆けつける。礼奈がSOSを発したら、すぐにわかるんだ。俺のレーダーが察知するから」

「レーダー? 創ちゃん、いつもありがとう」

「今日はやけに素直だな」

「『俺の礼奈に手を出すな』って、もう一回言って欲しいな」

「はっ? 今ここで? そんなこと何度も言えないよ」

「お願い。もう一度聞きたいな」

「ばかだな。こほん、これで最後だよ。俺の礼奈に手を出すな」

「きゃは」

「俺の礼奈に手を出すな?」

「きゃはは」

 礼奈といちゃついていたら、二階の窓が勢いよく開いた。

「こら、そこのバカップル。近所迷惑だ。早く家に入れ!」

 敏樹が窓から身を乗り出して叫んだ。

 バカップルとはなんだ。
 俺達はピュアなカップルなんだよ。

 敏樹の声が一番近所迷惑だっつーの。

「もう少しここにいようか。家に入ると敏樹がガチョウみたいにガアガア煩いし。たまには夜空を二人で見るのもいいな」

「うん。あの夏のキャンプを思い出すね」

「あの夏……。車の中から見た夜空」

「うん。綺麗だった」

 車の中から見た煌めく星。
 礼奈に腕枕して、一緒に朝を迎えた。

 礼奈と俺の……
 はじめての夜。