私は一橋先輩と一緒にアップテンポな曲を選び、二人でマイクを握りデュエットした。私も一橋先輩もあまり歌は上手ではないけど、みんなが盛り上げてくれた。

 本当に楽しくて、時間を忘れるくらいみんなと騒いだ。

 真面目で優等生軍団のイメージしかなかった生徒会が、こんなに楽しい人達の集まりだとは思わなかった。

 打ち上げを終え、渋谷駅で解散をした。一橋先輩は私と同じ駅のホームに向かう。

「一橋先輩の家、同じ方向でした?」

「俺が家まで送るよ」

「いえ、大丈夫です」

「もう暗いし。夜道は危険だから」

「一橋先輩は心配性ですね。創ちゃんみたい」

 一橋先輩は私より先に改札を通る。まるで私の家を知ってるみたいに。

「南の家のガーデニング綺麗だよね。あれはお母さんの趣味?」

「一橋先輩、私の家知ってるの?来たこと……あるんですか?」

「あっ……」

 一橋先輩は一瞬困り顔をした。

 電車は満員でギューギュー詰めだ。一橋先輩はドア付近にいた私を守るように、然り気無くガードしてくれた。

 相変わらず優しくて、紳士だな。

 創ちゃんはこんな時、私をムギュッて抱き締めてガードしてくれるんだ。それはそれで、超嬉しかったりする。

 駅に着き、満員電車から解放された私は、家までの距離を一橋先輩と並んで歩いた。

「一橋先輩大丈夫ですか? 逆に心配です。私を送ることで帰宅が遅くなるし、ほら、真面目な男子は不良に狙われたりするでしょう」

「喝上げされて、金を巻き上げられるとか? あはは、有り得ないよ。南こそ、心配性だな」

「だって一橋先輩は優しいし」

「俺、そんなに弱々しく見える? ちょっとヘコむな」

「違いますよ。一橋先輩はいつだって優等生で。素敵だから」

「優等生か……。優等生なんてつまらないね」