「こ、困ります。明日から生徒会室に行けなくなります」

「ごめん、ごめん。南が来てくれないと困るんだ。今のは忘れて。ちょっと暴走した」

「いえ……」

 創ちゃん以外の男子と手を繋ぐなんて、中学校のフォークダンス以来だ。あの冷静沈着な一橋先輩が暴走するなんて……。

 ま、まさか……。
 一橋先輩がラブレターの差出人じゃないよね?

「一橋先輩は、ブルーの色好きですか?」

「ブルー?好きだけど?それが何か?」

 ラブレターはブルーの封筒だった。

「一橋先輩って、字が綺麗ですよね」

「一応、書道二段だからね」

 書道二段!?
 ラブレターに書かれた文字は達筆だった。

「さっきから、なに?どうかしたの?」

「いえ、何でもありません」

 そうだよね。
 一橋先輩も、山梨先輩も、桐生君も、みんな違うって否定してたし。

 やっぱりあの手紙は、お兄ちゃんの悪戯かも。

 一橋先輩と一緒に駅まで歩いた。一橋先輩と別れ、急に創ちゃんに会いたくなった。

 制服のポケットから、携帯電話を取り出し、創ちゃんにLINEを打つ。

【創ちゃんに、会いたいな。】

「よっ、南。今帰り?」

「桐生君。部活の帰りなの?遅かったんだね」

「南こそ、こんな時間まで何してたの?さっき一橋先輩と一緒だったよね?」

「うん、今生徒会の仕事を手伝ってるの」

「生徒会?サッカー部のマネージャーは?」

「運動部は向いてないから、辞めちゃった。百合野がサッカー部のマネージャーになったんだよ」

「山本が?」

「うん、鈴木先輩もマネージャーを辞めたから」

「どうして?」

「恋のキューピッドだよ」

「は?なにそれ?鈴木先輩はサッカー部を牛耳っていた敏腕マネージャーだよ。新人の山本に務まるのかな。あっ、そうだ。俺、今から原宿のショップに行くんだ。南も来ない?」

「今から?でも……」

「いいじゃん。新しいアクセサリー入荷したんだよ。見においでよ」

「新しいアクセサリー?わぁ見たいな。ちょっとだけ行こうかな」

 創ちゃんからLINEの返信はない。
 アルバイトが忙しいのかな。

 再び携帯電話を開き、創ちゃんにLINEを送った。