「ねぇねぇ、ママー、このご本読んでぇ」 小さな女の子が、大きな絵本を抱えてトコトコと歩いて来た。 「はいはい」 お母さんはニッコリ笑って女の子を膝に乗せた。 絵本の題名は『白馬の王子』。 女の子の大のお気に入りである。 魔王にさらわれたお姫様を助けに行く王子様の話である。 「昔々、ある王国には……」 「むかちむかち…………」 お母さんの言葉と一緒に女の子も可愛い声を上げた。