その日、まるで抱きかかえられるように。
押し倒おされるように。
部屋に帰るなり、陸は私を抱いた。


その癖、切なくなるほど優しいキス。
長く、深い唇の重なり。
今までにないくらい、優しい口づけだった。


ゆっくりと進む時の流れの中、陸は何度も耳元で囁いた。


『好き』


その言葉が私の体に染み込んで、全身に回り、やがては頭の中で響きだす。


目蓋を閉じたとしても、陸の顔だけは消えることはなかった。





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