そんな私の気持ちなど、陸には届かない。


何の躊躇もなく、少し大きな重たいドアを押し開けて、陸は私の手を引いたまま店内に入って行った。


大きなBGMと明るい店内。
陸は迷わず一人の男性のところまで歩いていく。


「こんにちは」

「おう、陸。七海ちゃんも一緒に来てくれたんだ」


爽やかな挨拶とは裏腹に、彼の容姿はとても怪しい。


外見からは年齢など想像することすら難しいだろう。


ツーブロックに刈り上げられた黒い髪。
私など足下にも及ばない程の無数のピアス。


それは耳元だけでは収まらず、眉や鼻。
唇、舌にまで及ぶ。


そして何よりも衝撃的なのは、彼の着ているシャツからはみ出した刺青だろう。