私のうちには父親がいない。 物心ついた時には、既に母と2人きりの生活だった。 私にとっては父親がいないという事は、別段不便な事でもなかったし、言ってみれば普通の事だったのかもしれない。 なぜなら母は、未婚で私を産んだのだから。 だから私は、物心つくどころかそれよりもずっと前に。 既に生まれる前から父親がいなかった事になる。 母は看護婦として働きながら、女手一つで私を育ててきたのだ。