店までは何も考えずに歩いた。 あれこれと考えてしまうと、あの雰囲気に呑まれてしまいそうだった。 増して今日は、いつも隣りにいてくれた陸はいない。 私は一人だ。 それでもここまで来て引き返すのも癪にさわり、私は私の背中を自分で押したつもりで少しだけ早足で歩いていた。 店の前まで来ると、立ち止まらずに一気に扉を押し開ける。 聞こえてくるBGM。 独特の空気はいつもと何も変わりはしない。