いつものように、陸は鏡の前で仕事に行く準備をしていた。


そんな陸を目の端に感じながら、私はお気に入りの部屋の真ん中に、まさに大の字になって寝転んでいる。


「ななちゃん、俺さ今度の休みの日なんだけど、ちょっと用事があるんだ」


ネクタイを絞めながら、鏡越しに陸が言う。


「会えないの淋しいけど、ごめんね」

「そうなんだ。わかった」


───陸は、淋しいとか言う。


「もしかしてデート?」


そんな私の言葉に、思わせぶりな笑顔で振り向く。


「デートって言ったら、妬きもち妬いてくれんの?」