「今日で、卒業かぁ……」
本当に、今日という日を心待ちにしていた。
一年前のあの日から、今日という日が来るのを心を躍らせながら待っていたんだ。
長かった一年。
寂しくなかったと言えば嘘になるけど、でも、楽しかった。
誉くんとは二人っきりで逢えなかったけど、廊下ですれ違うたび目と目で会話して、微笑み合った。
そんな些細なことが嬉しくて、毎日毎日電話をしては「目が合ったね」とか「あまり見るとバレちゃうよ」とか言って笑ってた。
それが無くなってしまうのは少し寂しいけれど、でも、その代わりにこれからは毎日誉くんに逢えるようになる。
それが嬉しくて堪らない。
──ガラッ。
「遅くなってごめんね、華恋ちゃん」
「誉くん!!」
誉くんとのデートを色々と妄想している時、静かに開けられたには保健室の扉。
振り向けば、そこには小さなブーケを持った誉くんがいて、私の大好きな笑顔を浮かべながらゆっくりと歩み寄ってきた。
「卒業、おめでとう」
「……っ、ありがとう、誉くん」
渡されたブーケはパステルカラーの可愛い花。
あまりの可愛さに笑みが零れる。