「……っ、華恋ちゃん」
「……ぁ…」
分かってた。
誉くんも私も、このキスが終われば離れなければいけないってことを。
だから何度も何度も相手の温もりを求めて、
忘れないように脳裏に焼き付ける。
この逞しい背中を抱き締めることも。
柔らかくてサラサラな髪の毛に指を絡ませることも。
「……俺の温もり、忘れないで」
心を鷲掴みにするこの甘美な声も。
「誉くんも、忘れないで」
私をまっすぐ見つめる熱い眼差しも。
全部全部焼き付けて、心の中に仕舞い込む。
「忘れないよ。絶対」
「……私も」
絶対に、忘れない。
「次触れるときは本物のキスだから」
「……っ、……うん」
本物のキスは、一年後。
二人が恋人同士になって、“マスク無し”のキスをするとき。
それまでこの温もりを大事にしよう。
このキスは私たちの“未来への道標”なのだから。