「二人が付き合ってるって優歌さんから聞いた時、決めたことがあったんだ」
「……決めたこと?」
「そう。恋人になれなくても“先生”として傍にいようって。一緒に弁護士を目指そうって、そう決めた」
「誉くん……」
まさか、誉くんがそんな風に思ってくれてたなんて……。
「だから、華恋ちゃんから告白された時、信じられなかった」
……誉くん。
「必死に想いを伝えてようとする華恋ちゃんを見て大事にしようって思ったよ。優歌さんに呼ばれて返事出来なかったけど、家に帰ったらすぐに電話しようって思った」
「………」
「……けど、出来なかった」
今の今まで穏やかだった誉くんの表情が、徐々に曇っていく。
「通知が……来てたんだ。就任先の」
「……っ」
就任先の……。
それって……。
眉根を寄せた私に、誉くんが小さく頷く。
「見た瞬間、色んな事が頭の中を駆け抜けていった」
「………」
「悩んで悩んで悩んで」
「………」
「………そして、悩み抜いた結果、華恋ちゃんと離れる事を決意した」
……っ、誉くん。
そっと目を閉じた誉くんはその時のことを思い出しているのか、沈痛な面持ちで唇を噛み締めている。
その表情を見て思った。
苦しんでいたのは私だけじゃなかったんだって。
哀しんでいたのは私だけじゃなかったんだって。
誉くんも私と離れたくないって思っててくれてた。
悩んでくれてた。
それがどうしようもなく嬉しくて、
心が温かい気持ちで満たされていった。


