「やめ……っ、ゴホッゴホッ……下ろし、」
「悪いけど、それだけは聞けない」
なんで、
なんでこんなことするの?
なんで……!
「吏架子、みっちゃ……!」
「……っ、先生!」
「保健室に、行くんだよね?俺が連れて行くから二人は教室に戻りなさい」
二人に助けを求めたけれど無駄だった。
誉くんに何かを訴えようとしていた吏架子だけど、有無を言わさない誉くんの返答に言葉を詰まらせている。
当たり前だ。
誉くんは“私の好きな人”だけど、ここでは“先生”。
二人が強く言える訳がない。
「や、やだ……!先生下ろして……っ」
黙り込んだ二人を残して歩みを進める誉くん。
当然、私は抵抗した。
「せんせ、ゴホッゴホッ」
けど、その抵抗も熱がある体では大した抵抗にもならない。
「せんせ──」
「もう黙って」
耳元で聞こえた誉くんの艶めいた声にビクッと揺れ動く体。
そして。
「……っ、なん…」
まるで抱き締めるように私の体を自身に引き寄せた誉くんに、思わず戸惑いの声が零れ落ちた。
優しい誉くんのことだから、お姫様抱っこしたり抱き締めたりなんて特に意味なんかないってことぐらい分かってる。
分かってるから、余計にツラいの。
誉くんの優しさは……罪だよ。


