───バンッ!


非常階段の扉を力任せに押し開けて、外に飛び出す。


途端、弾かれたように溢れ出る涙。


ズルズルとその場に崩れ落ち、洩れる嗚咽を必死に喉奥で留めるけれど止まらない。



「……っぅ」



“華恋ちゃんが、心配なんだ”


久し振りに近くで聞いた、誉くんの声。


私だけに向けられたその言葉にどうしようもなく胸が熱くなって、余計に涙が溢れ出した。




諦めなきゃいけないのに。

もう、一緒にはいられないのに。


なんで、そんなこと言うの?

なんで、優しくするの?



「誉くんの、馬鹿……」



……違う。馬鹿なのは私の方だ。


分かってる。自分の気持ち。


心の中で喜んでいる自分がいるってこと、ちゃんと気付いてる。



嬉しかったんだ。


凄く凄く嬉しかった。



離れていても私のことを見てくれていることが、

心配してくれてることが嬉しくて堪らなかった。



「うぅ~」



やっぱり、好きだよ。


どうしようもなく好き。


でも、どれだけ想ってもこの想いは受け止めてはくれない。



「誉くん、誉く……」



中途半端に優しくしないで。

気持ちを受け取れないなら、いっそのこと突き放してよ。


お願いだから。


お願い、だから……