「顔色悪いけど、大丈夫?」

「………」

「風邪引いた?」



……どうして、そんなこと聞くの?

どうして……。


……もしかして、それを聞くために廊下にいたの?


「なんで………」




「立か───、……華恋ちゃんが、心配なんだ」

「………っ、」



……ズルイよ。

なんで、そんなこと言うの……?


なんで。

なんで私がこんなにも必死に諦めようとしているのにそんなこと言うの。



なんで、“心配してる”とか、言うの?



「……大丈夫です。失礼します」

「華恋ちゃ──」

「先生!」

「………っ、」

「……さようなら」



一瞬の隙をついて誉くんの手を振り払い、私は誉くんの顔を見ることもないままその場から駆け出した。