職員室の扉を開けたすぐ目の前。
そこに誉くんはいた。
廊下の窓に凭れかかって此方をジッと見据えている。
「………」
その口元にはいつもの優しい笑みは見られない。
……きっと、誰かを待ってるんだ。
そう思った私は、交えていた視線を拒絶するように外し、その場から逃げ出そうと足を踏み出した。
けれど、踏み出した途端背後から右腕を引かれ、再び足が縫い止められる。
引かれた腕に目を向ければ、そこには逞しい手があって。
「………っ」
ドクンと心臓が鈍い音を立てた。
「立川さん、待って」
「……っ」
“立川さん”
その言葉にまたズキンと胸が痛む。


