「なんで……」
誉くんがここにいるの?
誉くんの家は反対方向だよね?
「今日は駅前で用事があったからこっちから帰って来たんだ。曲がろうと思ったら聞き覚えのある声が聞こえてきたから」
「あは、あはははは……」
そういう事ですか。
「喧嘩は良いけどもう少し小さい声でね?」
さっきの私たちの喧嘩を思い出しているのか、クスクスと控えめに笑う誉くん。
……うぅ。最悪だ。
誉くんは私と響が“付き合っている”ことを知らない。
例え“偽り”でも響と“付き合ってる”だなんて誉くんに言いたくなかったから、響に口止めをお願いしてまで内緒にしていた。
それなのに、誉くんはヤキモチの一つも妬いてはくれない。
ちょっとぐらいその優しい笑顔崩して見せてよ。
誉くんの、馬鹿。
「華恋、何ボケっとしてんだよ。帰るぞ」
「え?あ、うん……」
響の呆れた声が耳に届いて顔を上げれば、早く来いよとでも言うように手招きしていて。
私は沈んだ気持ちのまま、とりあえず二人の元へと駆け寄った。
いつもなら「遅い!」とか文句の一つも言いながら腕を掴みにくる響だけど、今日は軽い手招きだけ。
それはきっと、誉くんが傍にいるから。
口が悪くてガサツで超俺様な響だけど、誉くんが傍にいる時は必要以上私には近付かない。
誤解されたくないと思っていることをちゃんと知っているから。
「響、ありがと」
本人には照れくさくてなかなか言えないけど、心の中ではいつも感謝してるんだよ。
私、頑張って告白するから。
応援してくれてる響と愛華ちゃんの為にも頑張って告白する。
だから誉くん、二年越しの私の想い、受け取って下さい。